AB+のまちづくりワークショップの足跡をAB+オーガナイザ工藤康浩がレビューします。
WS-10■2020[R2]/02/22|竹の塚地域学習センター
メインテーマ■タネ、まちに蒔く
スペシャルスピーク■ソーシャル・マドラー|近藤早映(東京大学先端科学技術研究センター地域共創リビングラボ特任助教)
トーク■ワークショップの軌跡|AB+工藤康浩
2015年にスタートしたまちづくりワークショップ。10回目の開催を機に方向性を再構築してリスタートしました。
竹ノ塚駅高架化に伴うまちづくりを中心にWSを重ねて来ましたが、視野を広げ多様な展開を図っていくことにしました。
AB+のワークショップで生まれるまちづくりのヒントのタネ。それを持ち帰って自分の住むまちに蒔いてみる!果たしてどんな色やかたちのまちづくりの花が咲くのか?
AB+のまちづくりワークショップ 「タネ、まちに蒔く」の様子を各オーガナイザーとスペシャルスピークしてくれた近藤早映さんからのレポートで報告させていただきます。
【AB+鶴巻俊治】
近藤早映さんの、「このままでは社会は変わらない」ということで今の道に進まれたということにすごく共感しました。どうすれば社会を変えていけるのか、ソーシャルマドラーという概念やリビングラボという言葉が、スッと私たちの身近になりました。ワークショップで話し合いがされ た、ジェントリフィゲーションと豊かさの対比については、我々のチームでは「便利さ」と「豊かさ」は違うという話の流れとなったように思います。お金で買えるものではない、情や暖かさのようなもの、自分たちの手で長い時間をかけて作り上げてきたものに、少しずつ魅力を感じ始めているように思います。街の将来を考えた時に、便利で機能的な街にするのではなく、より個性的で人の手仕事やぬくもりを感じられる街がよいのではないかと思いました。DXが社会を変えるという話もありますが、地域愛やアホが社会を変えるということになりたいですね。とても楽しい会でした。
【AB+伊部尚子】
ソーシャルマドラーって、リビングラボって何だろう?と思っていましたが、早映さんのお話しを聞いていくうちに、「これよく知ってるかも」という気持ちになりました。当初は何らかの目的を持って集まっていた多種多様な人が、そこで出会い親しくなる喜び。生活者も、よそ者もいる。そしてそれをかき混ぜる人も、かき混ぜられる人も、いい意味で素直な「あほ」たち。
これは、まさに「タネ、まちに蒔く」ではないですか!ジェントリフィケーションのお話しでは、豊かさとはなにか?をグループで考えましたが、経済的な意味だけで無く、心の豊かさ、人との繋がりの豊かさも、私たちが求める豊かさなのだという話になりました。この集まりによってあちこちで化学反応が起きて、そこから生まれるものが有形無形のまちの豊かさに繋がっていくのだなと思えました。
【AB+工藤理佳子】
考えるボランティア団体として多様な方々に参加していただくために、前夜ギリギリまで考えられることを想定して毎回準備をしてきたワークショップも10回目を迎えた。でも今回はなにもしていない。①あだちのブレーンとしてカラダひとつでだれでも参加できること。②レジュメやステイタスにも解放されて、自分のまちとして自分以外の人のまちのことを対等に話し合えること。③安心安全なまちづくりのタネを参加者が持ち帰り自分の活動の周りで蒔いていただけること。④それが当たり前のようにできて地域に根付く文化活動になること。今回はこうした呼吸するワークショップを参加者の多くが理解されていたからだ。まさに世界で起こっている「リビングラボ」 をゆっくりと私たちは実践してきたように思う。 「新しい文化政策を考える」という藝大院GAの「Meetingアラスミ!(around SUMIDAGAWA すみだ川界隈)講座」では、まちづくりの過程における「ジェントリフィケーション」は知った ことではないと、少々乱暴ではあるが愛のある言葉を伺った。 「ジェントリフィケーション」の対応として間違った選択をした結果、まちは朽ち果てて、例えばオリーブの量産地であったアンダルシア地域のような不毛地帯になったとして、そこに根付いた文化を理解する人がいれば新たなまちがつくられる。だから臆することなく対峙するには地域の力になる文化が必要という意味だと思う。「ソーシャルマドラー」はどれだけ人の心の奥深く攪拌できるのか、あだちにも実践者がいるため、スキームとして身近に感じられた。
子どもたちに経済の仕組みを教える千住POSSO流レモネードスタンドは、「タネまち」流として 参加者に価格を決めて頂きラオスのソンパオへのもち米100キロ支援となり、無事に目標額をク リアできた。
恒例のブレスト発表では各オーガナイザーがまとめる意味ある時間となった。
【AB+松元一明】
魅力あるまちづくりには、多様な価値観や考え方、異なるバックボーンをもった人々が必要であることは頭でわかっていました。しかしどうすればその人たちから魅力あるまちづくりのためのアクションを引き出すのかについては、まだよくわからず、そのことをずっと研究の対象としてき ました。
今回、近藤早映さんのお話を聴き、「ソーシャルマドラー」がそのきっかけになることが分かりました。「ソーシャルマドラー」は場所でもあり、集団でもありまた人でもあるようです。場は、さまざまな人々を集め、かきまわし、結びつけ、新たなものを生み出す源になります。また集団や人も同じく、さまざまな人々を集め、かきまわし、結びつけ、新たなものを生み出します。AB+は、「ソーシャルマドラー」であることにあらためて気づきました。 これからも「あだち」を対象に、あだちにまつわるさまざまな人々を集め、かきまわし、結びつけ、あだちに新たなものを生み出していこうと思います。
【AB+工藤康浩】
10回目となる今回のワークショップ。竹ノ塚駅踏切事故を契機に始まった立体交差化とそれに伴う駅やまちなみが生まれ変わることに関して、住民の関与が希薄で行政と鉄道事業者のみでモノやコトが進めていたことに危機感を感じて、何とか関与できないかとAB+の前身である「足立区政を見守る会」の活動として発足させたまちづくりワークショップが姿を変化させながら10回目 を迎えたのである。過去AB+は、その行政や鉄道事業者を相手にまちを再生する方法に課題を呈してきたが、ワークショップを重ねるごとに、一番考えて動かなければならないのは、先ずは住民であり、関心を持つ人々にもっと考える機会と時間を持ってもらうことだろうと思いを変化させた。そして今回、「タネ、まちに蒔く」というネーミングでワークショップを開催した。このワークショップでまちづくりのことを皆で考えタネを持ち帰り、そして自分たちの住むまちや地域でそのタネを蒔いてみる。育てあげればきっと様々な形や色の花が咲く。そんな風に、参加者が媒体となってまちづくりの輪を広げて行ければという願いを込めた。 今回、AB+のオーガナイザにそれぞれワークショップ・レビューを書いてもらった。基調講演していただいた近藤早映さんにもメッセージをいただいた。 これからのワークショップの確実な未来像が垣間見える気がする。
【スペシャルスピーカー|近藤早映さん】
工藤夫妻のお人柄に惹かれて「タネ、まちに撒く」に参加させていただきました。私実務経験や研究活動を通じてぶわっと湧いてきた、社会への開かれを促進する「ソーシャル・マドラー」のコンセプトについてもご紹介する機会をいただき、改めて感謝いたします。聴衆の皆さんの目がキラキラしているのに胸打たれましたが、その後のWSで、皆さんが自主的に足立のマドラーとして様々な対象を攪拌されていることが判明し、大変に納得しました。その後、covid-19の感染拡大で我々に行動変容が求められ、一見するとソーシャル・マドラーや皆さんの活動が成り立ちにくい環境に変異していくように見えます。その一方で回復力のあるコミュニティの作り方により一層の関心が集まるでしょう。ソフト・ハード両面での余剰や冗長性の担保がその一方策となるでしょうが、工藤夫妻や皆さんのマドリング的ご活動が、それを可能にしていくと信じています。ソーシャルディスタンシングが対話の機会を奪わぬよう、これからも、レッツマドリング!!
WS-09■2019[H31]/05/23|竹の塚地域学習センター
メインテーマ■まちと駅のつながり方
スペシャルスピーク■まちづくりにおける市民活動の可能性|AB+松元一明
トーク■|東京近郊駅の事例報告|AB+工藤理佳子、AB+工藤康浩
とうとう竹ノ塚駅完成予想図が区から発表されたのを機に、とことん駅について語ろうという企画。
先ずは基調講演としてAB+松元一明から市民活動によるまちづくりがどんな可能性を秘めているかを、まさに大学の講義風に参加者に説明してもらいました。
「市民参加の梯子(アーン・スタイン)」とか、市民団体がもたらすまちづくりへの影響についてとても分かりやすい「授業」になり、市民活動を頑張っている参加者の方からは自分たちのやっていることは間違っていないのだという存在の再認識をされた方が多く、感動している方が大勢いました。
その後、筆者とAB+オーガナイザ工藤理佳子から、東京近郊の駅の実態について取材動画を見てもらいながらレポート。東急池上線上野毛駅、東急田園都市線たまプラーザ駅、JR中央線東小金井駅の3駅をピックアップして、駅と駅前広場のつながり方や高架下空間の有効活用事例として報告。
その後、竹ノ塚駅完成予想図を見ながらの活発なディスカッションを展開。完成予想図からは何にも楽しみや市民参加できるようなスペースも見えてこないという残念がる意見が多く挙がりました。
WS-08■2018[H30]/09/01|A Taste(千住仲町)
ゲストスピーク①■ニューヨークのパブリックスペースの使いこなし方|AB+三谷繭子
ゲストスピーク②■島プロジェクトより 千住の広場|AB+鶴巻俊治
ブレストテーマ■日本のパブリックスペースと公共心
まちづくりワークショップは回を重ねて8回目。少し趣向を変えて「おとなのワークショップ」として開きました。
ニューヨークで数週間滞在して実態を見て来たAB+オーガナイザの三谷繭子からはニューヨークで今パブリックスペースがかなり上手に使われているというレポートをさせてもらいました。
それに呼応するように、北千住の広場の実態についてAB+オーガナイザであり「島プロジェクト」管理人の鶴巻俊治よりレポートをさせてもらいました。
四周を川に囲まれた北千住を「島」と捉えた島プロ。ニューヨークのように公共的空間がもっと上手に使われればきっと面白いまちになる余地があるのでは?という大人たちの揃った感想でした。
WS-07■2018[H30]/03/24|P-KUN CAFEÉ(千住旭町)
ゲストスピーク■ひばりが丘団地のこれまでとこれから|田中宏明さん*1+岩穴口康次さん*2
ブレストテーマ■団地の未来
スタディリポート■足立区の団地の今|AB+工藤康浩
*1一般社団法人まちにわ ひばりが丘事務局・HITOTOWA INC.シニアプランナー
*2ひばりが丘団地活性化ボランティア「まちにわ師」
前回の東京オリンピックを前後して建てられた都営団地などの公営住宅は、これからが建て替えのピークを迎えようとしていることを機に、東京23区にある都営団地の1/3を持つ足立区の団地の未来についてワークショップを展開しました。
基調講演として東久留米市・西東京市にまたがるひばりが丘団地の再生プロジェクトを推し進めてきた田中宏明さんに団地再生で取り組んできたことを丁寧に解説していただきました。さらにひばりが丘地域活性化ボランティア「まちにわ師」の岩穴口康次さんにもトークしてもらい、団地再生に関わってきた感想などを伺うことができました。デベロッパーと住民が一体となった取り組みで進められてきたことが参加者のみなさんと大いに共有できたと思います。
ブレストでは、足立区から提供を受けた資料を元に、筆者から足立区の団地の実態と問題点を提示し、その後フリーディスカッションを行いました。
多くの団地を抱える足立区だからこそ、その未来の展開を間違わなければまちは良くなるという共有感を得られたのではないでしょうか?
WS-06■2017[H29]/11/26|五反野駅~西新井駅高架下+カフェすうる
フィールドワーク■高架下まちあるき
高架化によってまちの安全はどうなるか?そしてまちはどんな新たなリスクを持つことになるのか?既に高架化が完了している東武スカイツリーラインの高架下空間を実際に歩いてその実態を探ろうというまちあるきフィールドワークスタディの第二弾。
五反野駅から西新井駅付近までの2駅分をゆっくりスタディウォークしました。高架橋における法的事情や耐震補強化の解説を筆者から行いました。高架下空間は、盗難自転車一時仮置き場や自動車車庫、倉庫などの使われ方がほとんどで、どちらかというとネガティブで人が寄り付きにくい暗いイメージの使われ方がされているということを参加者と共有しました。
まちあるきの後は喫茶店を借り切って意見交換会を開催。歩いてきた振り返りは活発な議論を呼び、まちづくりの課題に対してさらに見識を深められたという強い印象を持ちました。
WS-05■2017[H29]/09/30|竹の塚地域学習センター
ゲストスピーク■まちの中の居心地の良い居場所|AB+三谷繭子
ブレストテーマ■まちづくりの課題を探る
スタディレポート■南池袋公園の実例|介川亜紀さん(不動産ライター)
+タカチャリレポート|AB+松元一明
竹ノ塚駅周辺のまちあるきから見えてきた課題のついて紐解く第二弾。
基調講演としてAB+オーガナイザ三谷繭子から、今さまざまな場所で試みがなされているまちの中の居場所作りについて話させていただきました。
引き続き行ったブレストは、まちづくりの課題についてグループデスカッションを行いました。
ブレストではスタディレポートとして話題になっている南池袋公園の成り立ちや使われ方の実態について不動産ライターである介川亜紀さんに報告を頂きました。
さらに、AB+オーガナイザ松元一明より高崎市のシェア自転車「タカチャリ」の実際をレポートし、ブレストへの話題のヒントを提供しました。
WS-04■2017[H29]/05/27|竹の塚地域学習センター
WSテーマ■まちづくりの課題を探る
WS勉強会■道駅の変遷とプロトタイプ
ワークショップは先ずは、参加者から要望が強かった駅建築についてその形状分類やそれぞれのタイプが持つメリット・デメリット、駅が今のかたちになっていく変遷などを駅建築設計が専門である筆者から勉強会というかたちで行いました。
その後、第3回ワークショップで竹ノ塚駅高架化工事現場や周辺地区の現状と課題を共有化した参加者のみなさんと、その現状や課題についてディスカッションを行いました。
課題をいくつかに分類してディスカッションで出てきた意見や感想をその分類に沿ってグルーピングする作業を行いました。ここでグルーピングした具体的な課題は今後のワークショップで徐々に紐解きながら掘り下げていくことになりました。
WS-03■2017[H29]/02/11|竹の塚地域学習センター+竹ノ塚駅周辺
フィールドワーク■竹ノ塚駅周辺まちあるき
高架化が進む竹ノ塚駅周辺を実際に見て歩くという初めてのフィールドワークスタディでした。駅を中心にぐるっとまちを一周するコースを設定し、高架化工事の様子や完成形の説明などを中心に筆者から解説しました。
同時に竹ノ塚駅周辺の街区再構築や都道建設計画、重層長屋問題の現地、アダチャリの現状なども一緒に視察しました。
まちあるきの後は今見てきたことについて意見交換回を開いて共有化を図りました。
今までなんとなく高架化工事を見守ってきたみなさんに、高架化の課題やそれに伴う計画道路の持つ課題などが認識されたワークショップでした。
WS-02■2016[H28]/02/27|竹の塚地域学習センター
WSテーマ■まちづくりに求めるもの
基調講演■sensuous city|ホームズ総研所長・島原万丈氏
2回目は出版されたばかりの「官能都市sensuous city」を著したホームズ総研(現リクシル総研)所長の島原万丈氏をAB+オーガナイザ伊部尚子がコーディネートして基調講演をいただきました。
多くの不動産会社などが発表している住みたいまちランキングとは一線を画した独特のランキングをまとめられた背景やまちに対する視点の持ち方など、一般参加者にも分かりやすい講演をいただき参加者からは大好評でした。
ワークショップは「まちづくりに求めるもの」というテーマでグループディスカッションを行いました。ホワイトボードにディスカッションで出てきた言葉や概念をまとめてグループ毎に発表してもらい、多くの方にまちづくりに触れる機会が生まれ始めたと実感できる回でした。
参加者のひとりから「わたしたちでも駅やまちづくりに意見を言えるなんて夢にも思わなかった」という発言があり、誰もがまちづくりに意識を持つことの大切さを学んだ気がします。
WS-01■2015[H27]/09/17|竹の塚地域学習センター
WSテーマ■ひとに優しいまち
「足立区政を見守る会」としてまちづくりワークショップを初めて開催しました。
手探りの中で、集まってくれた大勢の区民や区職員、区議員が活発な議論を交わしました。議論の中で出た「森のような駅」というキーワードが際立っていた印象を参加者が持ちました。今だけのことではなく、まちづくりは100年後のまちのあるべき姿を想像することが大切であると言う共通認識を持ったワークショップでした。
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